自衛隊のことを調べてみたら日本の組織の強みと弱みが分かってしまった件④
俗物太郎です。
先回、自衛隊という組織の特徴をあぶり出すために、旧日本軍が持っていた特徴をあぶり出したいと述べました。
これを実施する上で、幸いにも大変参考になる本があります。知っている人も多いかもしれませんが、「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(戸部良一、他)です。
これは、太平洋戦争における諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗と捉え直し、これを現代の組織一般にとっての教訓として活用することを狙いとして書かれた本です。
歴史の勉強にもなるし、いろいろ示唆に富むことが書いてありますので、興味がある方は、是非読まれることをお勧めします。
以降、今回のテーマのベースになる考え方は、この本を参考にしています。
さて、この本に書かれている日本軍における失敗の本質を一言で表すと下記になります。
「日本軍は組織としての学習棄却ができていなかった」
学習棄却という難しい言葉があるので、もっと馴染みがありそうな言葉に置き換えると下記のようになります。
「日本軍は組織としてのPDCAが回せていなかった」
さらにこれを、下記のように変えると、今回のテーマの結論になります。
「日本の組織はPDCAが回せていない」
以降、「失敗の本質」で言及されていることに僕自身の考察も加え、なぜ日本の組織はPDCAが回せていないのか明らかにしていきたいと思います。
では日本軍の話に戻ります(しばらく「失敗の本質」に書かれている内容が続きますので、本を読んだ方や、太平洋戦争に詳しい方は、読み飛ばして下さい)。
「失敗の本質」では下記6つの作戦について取り上げているので、それぞれざっくりですが説明していきたいと思います。
④ガダルカナル作戦
⑤レイテ海戦
⑥沖縄戦
これは、当時中国で日本軍が作った満州国と外モンゴルとの国境における、ソ連軍の武力衝突のことです。当初、国境付近でのちょっとした小競り合いでしたが、その後大規模な武力衝突に発展しました。
これによって、日本軍、ソ連軍共に2万人近くの戦傷者が出ました。圧倒的な物量のソ連軍に対し、日本軍は最終的に撤退したのですが、その時には各部隊の損耗率が60〜70%もあったようです。
ソ連軍と日本軍の兵力について、「失敗の本質」での内容をを読み解いて下記に示したいと思います。
ソ連軍の兵力は、ソ連内陸部から前線へ送られた兵力も含め、およそ狙撃3個師団(約27大隊)、戦車4個旅団以上(600両以上)、飛行機2個旅団(約300機)、装甲車二個旅団(150-200両)、他(砲兵2個連隊。通信2個大隊、架橋1個大隊、給水工兵1個中隊)です。
ちなみに軍の単位は下記を参考下さい(近代陸軍の場合。また、数は国、時代によっても異なる)。
師団:10,000 - 20,000人
旅団: 2,000 - 5,000人
連隊: 500 - 5,000人
大隊: 300 - 1000人
中隊: 60 - 250人
これに対し、日本軍は第23師団と中心として、歩兵9大隊、火砲約100門、戦車2連隊、高射砲1連隊、工兵5中隊、自動車400両、飛行機約180機でした。
日本軍とソ連軍で単純な兵力の比較は難しいですが、歩兵だけでも日本軍に対して3倍の差がありました。
では、このような兵力差があったにも関わらず、なぜ日本軍はソ連軍に対し武力衝突を仕掛けたのでしょうか。
主な要因は下記です。
・ソ連軍の兵力を過小評価(情報の軽視)
・参謀の暴走を認める雰囲気(精神主義の支配)
・軍本部(日本)の関東軍に対する曖昧な指示(責任分担が曖昧)
どういうことかというと、そもそも日本軍はソ連軍を見くびっていました。その前提のもと、オラオラ系の参謀が、やらなくても良いのにソ連軍をやっちまえと考えて作戦を立てます。
実際に一部、やめた方がいいんじゃないかという冷静な意見がありましたが、そういう意見は消極的な姿勢であると周囲から判断され、潰されてしまいました。
また、日本の軍本部も、まぁ現地(関東軍)に任せておくかという感じで、戦局が悪化しているのを知りつつもはっきりと作戦中止命令を出さず、「少しずつ投入兵力を減らせ」というような、暗に作戦中止を示唆するような曖昧な表現で、現地に指示を出していました。当然これでは誰が作戦に対する責任者なのかがよくわかりません。
上記のような理由によってノモンハン事件は日本軍にとって大きな被害を出してしまいました。
それにもかかわらず、司令部は厳しい責任を取らさせることはなく異動や更迭の処分に留まり、逆になんとか戦場から生き残った部隊長が、敵前逃亡したと判断されて自決を強要されたそうです。
そのため、日本軍は貴重な経験を、その後に活かす機会を自ら潰してしまいました。
次回は日本敗戦のターニングポイントとなったと言われているミッドウェー海戦について、説明していきたいと思います。
次回へ続く