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自衛隊のことを調べてみたら日本の組織の強みと弱みが分かってしまった件15(完)

俗物太郎です。

 

東芝が組織としてPDCAが回せていない要因の続きです。

 

④縦割り組織

東芝は今では特に珍しくはありませんが、西室氏の時にいわゆる事業部制(社内カンパニー制度)を取っており、家電事業、原子力事業などの事業部に分け、各カンパニーに投資判断などの権限を委譲しました。

一方、各カンパニーの本社に対する遠心力を抑えるため、本社側が投資資本利益率などの指標を元に監査するという対応を取っていました。

 

ただし、実態として、本社の監査機能をもつ経営支援室は、ゆくゆく各カンパニーのトップへ上がるためのキャリアパスの場となっており、カンパニーにトップに対して強く言えないなど、監査機能が形骸化してしまい、カンパニーの遠心力を抑えるには至りませんでした。

結果、カンパニー内の会計がブラックボックスとなってしまい、粉飾会計につながっていく遠因となってしまったようです。

 

また、東芝半導体から原子力という、投資のライフサイクルが全く異なる事業を抱えており、事業部間でのシナジー効果が生まれにくい状態でした。

縦割りの組織構造は、意思決定は早くなるものの、横串を指すような仕組みがない限り、シナジー効果が生まれにくく、かつ本社機能に対する遠心力が働くため、それが悪い方向にいった場合、組織の中に日本軍でいう関東軍を作り出してしまい、組織がアンコントローラブルな状態に陥ってしまいます。

 

⑤和を大切にする

これは今回の文脈では科学的合理的な判断よりも、その場の空気や人と人との間柄を重視するような判断が重視される場合があるということを表しています。

 

東芝の場合、後に経営破綻することになる米原子力メーカーのウエスチングハウス買収における投資判断や、台湾メーカーを利用した利益のかさ上げによる粉飾会計をずるずると続けてきたことで、経営危機に陥りました。

これらはトップの合理的ではない判断によるものであり、和を大切にするという価値観の負の側面が表出したもの考えられます。

具体的にどういうことかというと、ウェスチングハウス買収を決めた当時の社長の西田氏は、自分の経歴に色をつけるためのスタンドプレーという側面に加え、自分を社長へ引き上げてくれた西室氏が買収推進派だったため、その気持ち忖度した判断である可能性が高いです。

また利益のかさ上げによる粉飾会計は、歴代社長の目先の利益の追求によるところが大きな原因ですが、公家集団と呼ばれるくらい温和な社員が、突っ走るトップの暴走を許してしまったことも少なからず原因になっているとも言えます。

これらは本来日本人の美徳とされる和を大切にする価値観の負の側面と言えます。

 

以上、日本組織がPDCAを回せていない5つの要因について、東芝の失敗事例を当てはめてみましたが、見事に当てはまっていることが分かると思います。

 

改めて日本の組織がPDCAを回せていない要因と東芝の事例を下記に示します。

精神主義東芝の事例 名門意識)

年功序列のシステム (東芝の事例 会長による院政

③学歴主義 (東芝の事例 トップのほとんどが東大卒)

④縦割りの組織 (東芝の事例 社内カンパニー制

⑤和を大切にする(東芝の事例  現社長の前社長への忖度、温和な公家集団と言われる社員)

 

上記は①の精神主義を上位構造とし、以下の下部構造それぞれが分かちがたくがっちりと結びついて強固なピラミッドを形成しています。

そのため、外部環境と組織の方向性があっている時は、組織として非常に強い力を発揮しますが、そうでない時には、なかなか変化ができない、つまりPDCAが回せないという欠点があります。これは日本の組織の宿痾かもしれません。

 

現在はテクノロジーの進化により、非連続的な変化がそこらじゅうで起こっています。そのため、組織はそれに合わせて変化していかなければ、生き残っていけません。

それはどういうことかというと、今の日本を取り巻く環境は日本の組織にとって非常に厳しい環境ということです。

日本の組織を少しでも柔軟にしていくためには、意図的に組織内にダイナミズムが生まれるようにしなければなりません。

そのためには、あえて組織の中に異分子を入れ、カオティックな状態を作り出すなどの、構造改革が必要です(ダイバーシティの重要性はまさにこれです)。

ただし、上記に述べたように、日本の組織は変化に弱いため、自発的に組織が変わっていくことは、一部の組織を除いて期待できないと考えた方が良いと思います。

 

一方、日本はこれまでシンゴジラでのラストで主人公が言っていたように、スクラップ&ビルドで発展してきました。そのため、一度外部からめちゃくちゃに壊されると、日本の組織の強みを発揮し、一致団結して復興するパワーを持っています。

ただし、そのようなカタストロフィをトリガーに日本の組織が変化する未来よりは、組織が変化しないまま緩やかに衰退ルートを進んでいくことを考える方が現実的です。

とはいえ、個人としてとりまく環境変化に対応していかないと、自分はもちろん、子供や孫がもろに衰退の割りを食うことになります。

 

私達が出来ることは、まず自分が組織に所属していた場合、その組織が環境変化に対応しているのか、それとも構造改革することなく、衰退ルートに乗っているのかを冷静に見極め、対応していくことです。

 

これまで述べてきた、日本軍の失敗(『失敗の本質』戸部良一、他)や東芝の失敗(『東芝の悲劇』大鹿靖明)は、日本の組織の弱みである、PDCAが回せていないということが、普遍的なものであり、今日に至っても、全く解決できていないということを、はっきり私達に教えてくれます。

私達はこの事実を真摯に受け止めなければならないと考えます。

 

以上