自衛隊のことを調べてみたら日本の組織の強みと弱みが分かってしまった件14
俗物太郎です。
日本の組織の弱みとしてPDCAが回せていないということを示す、東芝の事例の続きです。
③学校秀才の重用
では東芝の歴代の社長の学歴を見てみましょう。
初代 1939ー1943 山口喜三郎 ジョンズ・ホプキンス大
2代 1943ー1947 津守豊治 東京高商(現 一橋大)卒
3代 1947ー1949 新開廣作 不明
4代 1949ー1957 石坂泰三 東京帝国大法学部卒
5代 1957ー1965 岩下文雄 東京帝国大政治学科
6代 1965ー1972 土光敏夫 東京高等工業学校機械科(現 東工大)卒
7代 1972ー1976 玉置敬三 東京帝国大法学部卒
8代 1976ー1980 岩田弐夫 東京大法学部卒
9代 1980ー1986 佐波正一 東京大工学部卒
10代 1986ー1987 渡里杉一郎 東京大経済学部卒
11代 1987ー1992 青井舒一 東京大工学部卒
12代 1992ー1996 佐藤文夫 東京大工学部卒
13代 1996ー2000 西室泰三 慶応大経済学部卒
14代 2000ー2005 岡村正 東京大法学部卒
15代 2005ー2009 西田厚聰 東京大 大学院法学政治学研究科卒
17代 2013ー2015 田中久雄 神戸商科大商経学部卒
18代 2016ー 綱川智 東京大教養学部卒
これを見てみると歴代18代社長の内11人がが東大卒です。また、東大卒以外も一流大学で、基本的には勉強のできる学校秀才がトップになっていることが分かります。
ここで一旦日本の教育について触れると、基本的に日本の教育は、欧米のように自分で考えて自分の意見を述べるという「発信」を重視した教育に対し、既にある知識をいかに効率よく学ぶかという「吸収」、言い換えると「欧米の知識をキャッチアップ」することを重視しています。
この考え方は、明治から今に至るまで基本的には変わっておらず、これまで述べてきた日本軍においても同じでした。
キャッチアップ型の教育に必要とされると力としては、発信力や、ディベート力ではなく、暗記力や理解力が大事で、テストではいかに早く正解にたどり着くかが試されます。
ここでは、日本の教育の是非を議論するのが目的ではありませんが、上記のようななかで優秀とされる人材、いわゆる学校秀才は事務処理能力や調整力に優れた、官僚向きの人材になります。
では、東芝の話に戻りますが、これまでの日本経済における正解とは何でしょうか?
それは、「日本経済が右肩上がりになっていることを前提として、前年よりも売上を上げて利益を増やすこと」です。つまり会社として規模を拡大(シェアの拡大)していくことが正解でした。
ただし、学校秀才は正解に向かって最短距離で進んでいくことは得意ですが、その正解自体を疑うということには慣れていません。
東芝の場合、日本経済の成長が鈍化し、中国や韓国メーカーの台頭といったこれまでの前提が崩れていく中で、経営者が組織や事業の抜本的な構造改革をするのではなく、短期的な利益の追求に固執してしまったため、結果、会計を粉飾することに手を染めてしまいました。
学校秀才を重用することは、組織の力学がこれまでの正解を墨守する方向に働くため、変化の激しい時代において、組織の硬直性を強め、PDCAを回しづらくしてしまうのです。
これは、僕の推測に過ぎませんが、東芝は前に述べたように根底に「名門意識」が根付いているため、名門=東大というような、より学校秀才の経営者を産み出すような見えない力学が働いていたのかもしれません。
言い換えると、東芝にある「名門意識」は、経営者を学校秀才にしやすく、その結果、組織としての硬直性をより強化する方向に働いたと考えられます。
(次回へ続く)