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自衛隊のことを調べてみたら日本の組織の強みと弱みが分かってしまった件12

俗物太郎です。

 

先回まで日本組織の失敗事例として、日本軍の失敗を見てきました。

最近の事例として、東芝の問題を取り上げたいと思います。

 

言わずと知れた日本の一流企業である東芝は、2015年の不正会計操作に始まり、アメリカの原子力メーカーの破綻に伴う減損が生じ、赤字を補填するため、東芝メディカルなどを売却し、それでも足りず、ついに最大の稼ぎ頭である東芝メモリを売却せざるを得ない状況まで追い込まれました。

 

しかし、その売却相手はなかなか決まらず、さらに、提携していたアメリカの半導体メーカー ウエスタンデジタルから東芝メモリの株式売却に対する訴訟をおこされたりと、泥沼に陥っていました。

 

ようやく、売却先が米系ファンドのベインキャピタルを含む日米韓連合に決まり、売却利益を織込むと、18年3月期には、売上高が約1兆2,000億円、営業利益が4,700億円と過去最高益を更新する予定であり、回復に転じて来たかに見えます。

 

ただし、実態として、営業利益の9割を稼ぎ出していた半導体事業がなくなってしまうため、今後の成長の柱となるものがなく、前途多難な再スタートになることは間違いありません。

 

さて、では一体なぜ、日本の一流企業である東芝が、虎の子の半導体事業を売る羽目になるほど、坂道を転げ落ちてしまったのでしょうか。

 

詳しくは、大鹿靖明 著の『東芝の悲劇』(幻冬社)を参考頂きたいのですが、ここでは結論を言ってしまいます。

 

東芝の問題は、不正会計をしていたことでもなければ、シャープのように市場環境の激化に伴う競争力の低下でもなく、トップに人材を得ることが出来なかったという組織の問題です。

(東芝の悲劇の著者はこれを「人災」という言葉で表しています。)

 

組織の問題ということであるならば、これまで『失敗の本質』で明らかにして来たように、東芝は組織としてPDCAが回せていなかったと考えられます。

では、東芝が組織としてPDCAを回すことが出来なかった要因を、日本軍の分析をしたときと同じように下記の5つの要因に分けて説明していきたいと思います。

 

精神主義

②年功上列のシステム

③学校秀才の重用

④縦割りの組織

⑤和を大切にする風土

 

精神主義

日本軍の陸海軍がそれぞれ、日露戦争以降から続く、「白兵銃剣主義」と「艦隊決戦主義」のパラダイムから脱することが出来なかったように、東芝のトップである社長はどんなパラダイムに囚われていたのでしょうか。それを紐解いていきたいと思います。

 

東芝はこれまで財界の総理と呼ばれる経団連会長(任期は2期4年が慣例)を2名輩出しています。

(石坂泰三 氏と土光敏夫 氏)

経団連会長のポストについた人は、これまで新旧の経団連含め、現在の会長である日立の中西宏明 氏を入れると14人なので、ほとんど各社1回きりの会長就任の中では、珍しい部類に入ります。

そのため、日本の財界において東芝は、他社に対して特別な存在でした。

また、会社の風土に対し、東芝と似たような業態を持ち、荒々しい人材が多かった日立は、「野武士集団」と呼ばれ、一方、東芝は割とおっとりとした人材が多かったため、「公家集団」などとも呼ばれています。

 

このような、財界での他社に対し、一歩抜きん出た存在であり、かつ、もともと公家集団と呼ばれるような風土であったため、組織のメンバーの中には「名門意識」が根強いていたと考えられます。

特にトップである社長になれば、「名門意識」はさらに強烈になります。

これが東芝の中にあったパラダイムではないかと考えられます。

 

東芝の悲劇」では、東芝の社長を2016年の網川智氏から6代も遡り、当時の東芝としては異例だった技術屋ではなく、営業をバックグラウンドとした西室泰三氏が社長に就任してからおかしくなったということを分析しています。

東芝の問題をテーマにした本はいくつかありますが、大抵、西室氏の2代後の社長である西田氏を戦犯としています。ただし、それでは東芝の問題の根本に行き着かず、さらに深掘りしている「東芝の悲劇」が最も東芝の問題の根本に迫っているのではないかと、僕は考えます)

 

次回へ続く