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深夜アニメはキモい なぜいつまでも市民権を得られないのか ⑨

俗物太郎です。

 

 

5.まとめ

 

さて、これまでなぜ深夜アニメはキモいのか、下記3つの観点から説明しました。

 

①作品がキモい

②ファンがキモい

③声優がキモい

 

キモい理由は「一部の深夜アニメとそれを取り巻く特別な環境(声優を媒介者とするキモい作品とキモいファンを繋ぐエコシステム)がファンによって世間へ拡がってしまったため」と結論付けました。もっとくだけた言い方をすれば、「深夜アニメのキモい部分だけが世間に広まってしまった」ということになります。

 

次に、キモくないアニメに必要なものとして下記2点が重要だと説明しました。

 

①統一した世界観を世間に対して訴求できるプロデュース力

②キモいキモくないなどの既存の価値観を突き抜ける、監督のアニメに対する情念を超えた怨念

 

つまり、プロデューサーと監督の力量次第でキモさはなくなるということです。さらに言えば、先回説明しましたが、マーベルのようにプロデューサーが統一した世界感を保つために作品横断で目を光らせ、気概を持った個性的な監督が前作のストーリーによる縛りを超克していく作品作りをすれば、世界的にヒットする可能性があるということです。

 

以上を踏まえた上で、現在の日本において、プロデューサーや監督の力量についてはどうでしょうか。

 

プロデューサーについて、⑦(前々回)で挙げた「君の名は。」を海外含めてヒットさせた川村元気氏がいます。他に思いつく有名なプロデューサーはジブリ鈴木敏夫氏がいますが、そんなところではないでしょうか。

 

監督についても、現役でヒットアニメ作品を出している凄い監督ほとんどいないように思われます。思いつくのは、エヴァ庵野監督くらいです。現役(今現在アニメを作っている)監督で、アニメに対して怨念レベルの思いを持っているのは庵野監督以外に見当たりません。

 

これは僕の勝手な推論ですが、アニメの一時代を築いてきた、上の世代の監督達が偉大過ぎて、現役のアニメ監督は、その長老達に遠慮してしまって、スケールの大きな作品を作るのを躊躇しているのではないでしょうか。先人が偉大すぎると気持ちとして、チャレンジャーになるよりは、フォロワーになりやすいかもしれません。偉大な先人達としては、宮崎駿を代表に、「ガンダム」の富野由悠季、「アキラ」の大友克洋、「攻殻機動隊 」の押井守らがいます。

 

力量のあるプロデューサーと監督が不足している状況に加え、日本のアニメでマーベル作品のように作品横断で世界観を統一し、かつ前作のストーリーを超克していくような作品群とそれを作る制作会社はまだありません。

 

といってもそれに近しいものは日本にもあります。

例えば、作品群として挙げるならば、ガンダムシリーズがあります。しかし、実際は作品名にガンダムとついているだけで、作品間のつながりがあるようには見えません。また、マーベルのケヴィン・ファイギのように作品横断で世界観の統一に目を光らせている人がいるようにも見えません。

では、ジブリ作品はどうでしょうか?鈴木敏夫という一流のプロデューサーに、宮崎駿という稀有な才能を持つ監督もいます。ただし、マーベルのように世界でコンスタントにヒット作品を生み出しているかというとそうでもありません。

 

それは、作品が宮崎駿頼みになってしまい、1、2年のスパンで作品を作ることが難しいことと、1人の人間が作り続けることによる、先鋭化(難解で一般受けし難い作品になって行く)があります。

ちなみに、ジブリにはもう1人、高畑勲という稀有な才能を持つ監督や、他の若手監督もいますが、そもそも高畑勲は寡作の監督ですし、他の監督の場合は、やはり宮崎や高畑と比べると物足りなさを感じます。

 

要するに、ジブリ作品は特定の人頼みで制作される構造であり、マーベル作品のようにヒーローの数だけ、続編を含めて作品を生み出せる構造ではありません。例えていうとジブリはレジェンド級の4番打者が1人いる野球チームで、マーベルは各チームの4番打者を沢山集めた野球チームです。

 

レジェンド級の4番打者は高い確率でホームランを打ちますが、ホームランの数でいったら4番打者を沢山集めたチームの方が確率的には多くなります。そして、長期的な視点に立てばレジェンド級の4番打者も徐々に衰えていったり、独自の道を追求し過ぎてそのうちホームランを打てなくなってきますので、新しい4番打者を入れ替え、新陳代謝を繰り返すチームの方がホームラン数(作品のヒット数)は多くなります。

 

また、アニメではありませんが、マーベル作品に近いものとして、日本のヒーローものがあります。ウルトラマン仮面ライダーなどです。ただし、これらは子供向けてに作られていたり、テレビシリーズのため一話一話の予算が限られているため、マーベル作品のように幅広い年代に訴えるストーリーや、ド派手な演出をふんだに織込むことはできません。

 

つまり日本はマーベル作品のようにプロデューサーと監督が一体となり、統一された世界感を持ち、莫大な制作費を注ぎ込んだ作品群とそれを作る制作会社がありません(なんとかジブリがこれに近いが、宮崎駿という才能がいなくなった後は崩壊しそうな気がします)。

 

力量のあるプロデューサーや監督がおらず、両者のシナジーを駆動力とする制作会社もないため、今の日本のアニメ界はないない尽くしの状況と言えます。

 

(次回へ続く)