カイジゲーム 自分がブラック企業にいると思っている人はやってみよう③ 【調査フェーズ#2】業界における自社の位置づけを知る
苦界 生(いきる)です。
さて調査フェーズで調べる下記の内容について、それを調べる目的と共にもう少し細かく見ていきたいと思います。
①業界における会社の位置づけ
②会社の歴史
③組織・体制
④金の動き(リソーセスの配分、何で儲けているか等)
①業界における会社の位置づけ
前回の記事にも書きましたが、まずそもそも業界自体がブラックなのか、もしくは自分の会社固有のことなのかをあぶり出す必要があります。
ただし、業界自体がブラックというのにも濃淡があり、この業界はどの会社もブラックだからさっさと転職したほうがよい場合もあれば、業界自体ブラックの傾向があるが、その中で比較的良い会社もあれば、悪い会社もあるという場合もあります。
例えば僕の勝手な決めつけでいうと、前者は建築業界における下請けです。
二次、三次請けならまだしも、五次、六次請けの場合もあり、各階層では上位発注会社のピンハネが起きるため、下の階層に行くほど薄給できつい仕事になるため、業界構造自体がブラックです。
後者は外食業界です。競合が多く、業界自体がデフレ傾向にあるため、どうしても価格競争になり、その割を食って人件費が削られるため、少ない人数でたくさん働くという構造になるため、ブラックになりやすいです。
ただし、会社によっては高付加価値の料理を提供したり(最近のファミレス)、従業員を教育してサービスの質を上げたり(スターバックスなど)、などのプレミアム戦略をとったりすることで価格競争に巻き込まれないようにしたり、徹底的な効率化によって原価を下げ、デフレ傾向にも対応し、利益を上げている会社は(鳥貴族など)、ブラックになりやすい業界だったとしても、比較的従業員の待遇が良いかもしれません。
上記のように業界構造がなんとなく分かれば、ブラックなのは業界自体なのか、自分の会社固有のことなのかあぶり出しやすいのですが、多くの場合、業界構造自体が分からない場合もあるので、ゼロから下記のようなことを調べていく必要があります。
・業界の市場規模は?
・業界が提供しているものの原価
・業界のサプライチェーン
・ライバルは何社くらいいるか?
・業界何位か?
なんか小難しくていやだな、と思うかもしれませんが、要は前に述べたように、業界自体がブラックなのか、自分の会社固有のことなのかを知るために、上記で挙げた項目を調べれば、下記のようなことが分かってきます。
・市場規模が小さいのに、ライバルがたくさんいれば、価格競争になり、利益が減り、人件費が低くなる
・自分の会社が製造・販売しているものが安ければ、利益が少なく、人件費が低くなる
・サプライチェーンが長ければ、下流に行けば行くほどピンハネの構造になるので、利益が減り、人件費が低くなる
・ライバルがたくさんいれば、価格競争になりやすく、利益が減り、人件費が低くなる
・業界で下位ならば、シェアを取るために、価格を下げ、利益が減り、人件費が低くなる
・または、上記それぞれの組み合わせによって(業界が提供しているものの原価が安く、市場規模が小さい等)利益が少なく、人件費が低くなる
ちなみに、上記は「利益が少なくなる」=「人件費が低くなる」=「薄給でたくさん働かされる」という図式を採用していますが、最近あった電通社員の自殺のように、「給料は高いが(人件費が高い)、その分高いアウトプットを求められるのでモーレツに働かされる」というパターンもあるので、ここでしっかりと業界構造や自分の会社の位置づけを知っておくことは重要です。
受験勉強でも、自分が一体、受験生の中で、どこに位置しているのかが分からなければ、何をどれだけ勉強すればよいか分からず、作戦が立てられません。
次回へ続く
カイジゲーム 自分がブラック企業にいると思っている人はやってみよう② 【調査フェーズ#1】 必要なのはマインドセットの切り替え
苦界 生(いきる)です。
それではカイジゲームを実行する上で、最初のフェーズである、調査フェーズについて述べたいと思います。
調査フェーズの目的は自分が勤めている会社について、自分がブラックだと思っている要因(例えば過重労働など)が、いったい何に起因しているかということをあぶり出すことを目的としています。
この後、カイジゲームは仕込みフェーズと反撃フェーズへと続きますが、この調査フェーズでうまく要因をあぶり出せないと、あとのフェーズでの効果が期待できなくなってしまいます。なので、3つのフェーズの中で一番の要諦は調査フェーズとなります。
また、調査フェーズでもう一つ、意識いただきたい点は、マインドセットを次のように切り替えることです。
これまで、俺は何も考えず、まさに会社の歯車だったかもしれないが、今後は、会社と対峙する刃になるのだ、というマインドセットです。
TVゲームでもそうですが、ゲームを始めるときには、これからゲームをするのだという意識の切り替えを誰でも大なり小なり行っています。
カイジゲームをするためには、マインドセットが必要です。
なぜなら、調査フェーズではこれまで自分が気にしていなかったような情報をインプットすることになるからです。
勉強もそうですが、ただ漫然とテキストを眺めている受け身の姿勢では情報が頭に入っていきません。例えば、志望校に合格する、単位を取るなど、何らかの動機づけをして、積極的な姿勢にならないと、必要な情報のインプットがうまく進みません。
なので、これから述べる、調査フェーズで取得していく情報をインプットするために、会社の歯車から、会社と対峙する刃になるのだ、という受け身から積極的な姿勢になるマインドセットが必要になります。
では、調査フェーズは会社のどんな情報をチェックすればよいか、下記に示します。
①業界における会社の位置づけ
②会社の歴史
③組織・体制
④金の動き(リソーセスの配分、何で儲けているか等)
これらを調べることで、一体どこにブラックな要因があるのかわかってくると思います。
ちなみに、一つ注意していただきたいのが、①を調べていくことで、他社の状況にも目を向けることになるかもしれませんが、それによって、ブラックな要因が自分の会社固有のものではなく、そもそも業界自体にあるのではないか、ということも分かってしまうかもしれません。
もし、ブラックな要因が業界自体にあるとすると、これは個人vs会社という構図ではなくなってしまいますので、カイジゲームが成り立たなくなってしまいます。
それが分かってしまったら、残念ながら早々に別の業界に転職するなどの対応が必要になるかもしれません。
カイジゲームは、あくまで業界ではなく自分の会社のみがブラックであるという前提で行います。
また前置きが長くなってしまったので、上記①~④についての説明は次回したいと思います。
カイジゲーム 自分がブラック企業にいると思っている人はやってみよう①
苦界 生(いきる)です。
電通に入社した東大卒新入社員の過労が原因とみられる自殺が話題になっております。
少しニュースの内容を見てみると、過労(月100時間超の残業)に加え、よくわからない状態での上司からの仕事の丸投げ、そのアウトプットに対するダメ出しの嵐などもあったようです。
推測の域を出ませんが、自殺に至った背景としては、電通という華やかなイメージの企業に希望に溢れて入社したものの、よくわからない状態で丸投げされた仕事に対し、泥臭い作業を続け、あわやなんとかひねり出したアウトプットは上司にボロカスに言われ続けることで、華やかな企業イメージは失われ、かつ、自分の自信も打ち砕かれ、序々に神経をすり減らしていったことではないでしょうか。
巷間では上記のような事例があると、すぐにこの会社はブラックか否かというような話題が出てきます。
では、ブラック企業とは一体どういった会社のことを指すのでしょうか。
下記にウィキペディアの内容を転載します。
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す。(ウィキペディアより)
僕の持っていたイメージでは、単純に過重労働をさせる企業というように思っていましたが、それは上記の定義によると、狭義の新興企業における過重労働のことを指すようです。
そういった意味で言うと、電通に関しては新興企業ではないので、ブラック企業には当てはまらないのかもしれません。
しかし、ここでは定義うんぬんより、あえて、自分が会社についてどう思っているかという、主観的な判断をメインにしたいと思います。
さて、前置きが長くなりましたが、これから僕が提案したいのは、自分がブラック企業に勤めていると思っている人に向けたゲームです。
ゲームというと、TVゲームなど、仕事ではなく趣味の時間に行うものと思われるかもしれませんが、僕の提案するゲームは仕事中に行うことであり、プレイヤーは自分自身です。
いったいに何を言っているんだと思われるかもしれませんが、要するに、今ブラック企業にいるという状態を、自分がある種のゲームに参加している状態ととらえるということです。
ゲームのクリア条件は、今の職場のブラックな状況からの脱出、もしくはそのブラック会社自体の崩壊です。
ブラック会社自体の崩壊と書くと、センセーショナルな内容に見えますが、要は会社自体が、内的もしくは外的な力によって、ブラックな状態でなくなることを意味します。
(例 外的な力:労働基準監督署の立入り等)
簡単に書くと、自分がブラックな状態から抜け出すが、会社自体がブラックな状態から変われば、晴れてゲームクリアということです。
遅くなりましたが、このゲームを「カイジゲーム」と名付けたいと思います。
あえて説明する必要もないかもしれませんが、カイジとは福本伸行の漫画のカイジのことです。
ギャンブル漫画ですが、カイジが自身の置かれた過酷な状況から、一発逆転を狙って脱出するというのが、この漫画の構成ですので、そこからカイジゲームと命名しました。
カイジゲームの構成は、大きく分けて以下の3つになります。
フェーズ1:調査フェーズ
フェーズ2:仕込みフェーズ
フェーズ3:反撃フェーズ
フェーズ1では主に、自分を取り巻くブラックな状況が一体何に起因しているのかを、見極めます
フェーズ2では、そのブラックな状況から抜け出すための準備をします。
フェーズ3では、フェーズ2で準備したことをもとに、行動を起こします。
次回以降で、各フェーズについてもう少し詳しく書いていきたいと思います。
地方国立大卒だけど「学歴」についての話題を終わらせてみようと思う⑦(最終回) ペーパーテストによる指標を使い続けることはナンセンス
意識高男です。
前回、日本において学歴が機能する前提として、日本の企業に競争力があり、好業績を保つことで、高収入が実現できていることが必要であると書いた。
それでは、現在の日本企業に競争力はあるのだろうか?僕はどんどんなくなってきていると思う。
象徴的なのは鴻海精密工業に買収されたシャープの件だ。かつては液晶TVや液晶パネルといえばシャープ、そしてそれを生産する亀山工場は世界の亀山などともてはやされていた。
それがどうだろう、液晶技術はもはやコモディティ化してしましい、低コストで生産できる韓国や中国メーカーとの価格競争に負け、液晶にとって代わるような技術もないため、かつての存在感は全くと言っていいほどなくなってしまった。
むしろ高橋社長以下、経営陣のお粗末さを世間に対し、垂れ流している印象が強い。
シャープも含め、かつての日本のお家芸であった低コスト高品質の電機業界は、韓国や中国メーカーに取って代わられてしまっている。
つまり、日本のこれまでの競争力の源泉であった、低コスト高品質は、技術がコモディティ化したとたんに、韓国や中国メーカーに負けてしまうということを意味する。
当然、韓国や中国メーカーの後には、現在の発展途上国が虎視眈々と目を光らせているはずである。
何が言いたいかというと、他社にまねされたら終わりなのである。
まねされたとたんに、一気に過当競争に陥り、血みどろの戦いに入ってしまう。そうならないためには、絶対にまねされない技術がベースとなる製品を造るか、まねをしようとすると経済的に相当の損失が出てしまうようなプロセスを経る製品を造るしかない。
つまり、競争力を維持するためには、他社にまねができず、かつ消費者がほしがるようなユニークな製品を造ること、これに尽きる。簡潔にいうと、他社との差別化である。
低コスト高品質での差別化はもはや難しい。韓国、中国メーカーがすぐに追いついてきてしまう。
低コスト高品質でのこれまでの競争から、他社にない新たな価値の創造の競争へ移行したのが、現在のビジネス環境の質的変化である。
さて、ビジネス環境が変化したことに対し、その環境変化に追従し、新たな価値を創造し続けている日本企業がどれだけいるだろうか。
どちらかというと一部上場企業より、ベンチャー企業、例えば、ミドリムシを量産化して食料やエネルギーにしようとしているユーグレナや、ロボットスーツを作成しているサイバーダインなどの方が、新たな価値を創造しているように思える。
いったい何故、一部上場企業の大企業よりもベンチャー企業の方が新しい価値の創造ができるのか?質問を変えると何故、大企業は新しい価値を創造しづらいのか?
ここでとうとうこれまで長々と書いてきた本議論も大詰めになってくるが、その答えこそ、大企業がペーパーテストで高得点が取れる高学歴の人たちの集まりだからである。
ペーパーテストの結果による選別が機能するのはまさに、ビジネス環境に正解がある場合、つまり既にある製品を低コスト高品質で造るために皆がグワーッと集中する場合においてである。
これこそメイドインジャパンが世界を席巻した、日本企業と日本人が得意としていた、一致団結してものづくりに励む姿そのものである。
そして、これが本議論の結論であるが、「ペーパーテストによる選別では質的な差別化ができない」ということである。
現在のビジネス環境が、いかに新しい価値を創造し、他社と差別化を図るために、そういう価値を生み出す人がこれからは必要となってくるのに、もっと安く、もっと高品質にというような、テストの点をあと5点、10点というように100点に近づけていくような考えはもう終わっているのである。
それよりは問題自体を創り、それに対し30点でも40点でもいいからとりあえず回答していく考え方の方が重要なのである。
そう考えるとペーパーテストの点数で学歴が決まっている今の日本において、学歴を語ることは、もう使えなくなった物差しで、新しいものを測ろうとしているようなものである。
なかなかうまい例えが思いつかないが、例えば戦国時代ならいざ知らず、今の世の中において剣術の腕前で人の優劣をつけている人はそうそういないだろう。
趣味でやるならまだしも、キャリアアップのために本気で剣道を習いだす人がいたら大分危ない人だと思うのではないだろうか。
他社もしくは、他者との差別化が必要なフェーズに移ったのに、ペーパーテストによる指標を使い続けることはナンセンスである。
これを持って学歴の話題を終わりとしたい。
もし、今後も学歴の話題が再開するとしたら、ペーパーテストによる評価以外のシステムが定着してからである(いったい何年後にそうなるのかは分からないが)。
というわけで、これからの世の中、ぐいぐい追いついてくるハングリーな人達に対して負けないためにも、僕も含め、皆さんも自分だけの価値を創れるようになりましょう!
地方国立大卒だけど「学歴」についての話題を終わらせてみようと思う⑥ 世界大学ランキングの中における東大の位置づけ
意識高男です。
前回は世界の大学ランキングの中で東大の位置づけを見てみたが、今回は行きたい企業についてみてみたいと思う。
1~5位まで下記に示す(NewsPicks 2016年3月特集 東大・早慶の就活 東大生が行きたい企業ランキングより)。
また会社名の後に()で時価総額(10億ドル)を示す(100円/ドル換算)。
1位 三菱商事(28)
2位 ゴールドマン・サックス証券(72)
3位 マッキンゼー・アンド・カンパニー(非上場のためなし)
4位 電通(15)
4位タイ 伊藤通商事(22)
まず、商社が人気なのが見て取れる。あと、意外なのが外資系が2,3位を占めている点である。日本の若者は内向きになっているというようなことが囁かれているが、こと東大に限ってはそうでもないようだ。
ちなみに、上記のランキングと直接的に対応しないが、それに類するものとして、ユニバーサム社の世界で最も魅力的な企業ランキング2015年のビジネス編とエンジニアリング編の1~5位までを示す。
(世界24万人の学生、1,753大学を調査、ビジネス編とエンジニアリング編がある[日本で言うところの文系編、理系編のようなもの])
《ビジネス編》(時価総額 10億ドル)
1位 グーグル(518 持ち株会社のアルファベットとして計上)
2位 プライスウォータハウスパークス会計事務所(非上場のためなし)
3位 アーンストアンドヤング会計事務所(非上場のためなし)
4位 ゴールドマン・サックス証券(72)
5位 KPMG会計事務所(非上場のためなし)
《エンジニアリング編》(時価総額 10億ドル)
1位 グーグル(518)
2位 マイクロソフト(436)
3位 アップル(604)
4位 BMW(53)
5位 GE(296)
やはり世界の大学生にとっては、ビジネス編、エンジニアリング編ともにグーグルが魅力的なようだ。
また、ビジネス編として特徴的なのが、会計事務所が 3つも入っていることだ。どういう理由で人気なのかは推測だが、ある種、時代のトレンドに影響されない業界としてランクインしているのではないだろうか。
企業はたとえ大企業でも、常に競争にさらされている限り倒産の危機はゼロではない。しかし、企業が存在する限り企業の会計はなくならない。つまり、安定性という意味で考えると大企業に就職するよりは、企業の機能を担う業界の大手に就職する方が高いといえる。
このような考えは日本でも普通にあるが、いかに世界といえども、就職するうえで安定性を考えるのはごく自然なことなのかもしれない。
就職する企業において、日本と世界で通底する考え方の特徴に安定性が含まれていると推察するが、では対象企業における特徴はどうだろうか。
東大生のランキングを見ると、ゴールドマンサックスやマッキンゼーが含まれているあたりは、世界に目を向けている感じがするが、メインはやはり日本企業だ。
時価総額でみると決して少なくはないのであるが、いかんせん世界のグーグルやアップルと比べてしまうと10分の1以下である。
何が言いたいかというと、今日学歴が機能しているのは日本企業が世界においてそれなりに競争力があり、利益を上げ続けているため、高学歴=業績の良い企業に入社=高収入という図式が成り立っているためである。
一度、日本企業が世界のマーケットで競争力を失った瞬間、東大といえども世界でみると42位で決して高い位置にはいないため、世界の上位大学卒の入社志望者に対し(落ち目になった日本企業に入社したいと思う世界の大学生がどれだけいるか疑問だが)相対的に価値は下がる。また、業績が傾けば当然高収入も維持できなくなる。
つまり、上記の高学歴=業績の良い企業に入社=高収入という図式は崩れる。
業績が傾いても、企業側も志望者側も企業のブランドや学歴に拘って、無理やり上記の図式を当てはめようとすることは大いに考えられるが、一緒に沈んでいくだけだろう。
再度繰り返すが、日本での学歴に拘ったとしても、世界においては42位だし、また、東大生の志望する日本企業も世界においてはアップルやグーグルの10分の1以下なのだから、日本企業の競争力が低下し、高収入が担保できなくなったとたんに、図式が崩れ日本での学歴は意味をなさなくなるということだ。
ここまでで、日本の学歴のトップである東大の世界での位置づけから、学歴が意味をなさなくなる可能性を書いた。
しかしこれではまだまだ片手落ちで、学歴が機能しないことを説明したことにはならない。あくまで、日本企業の競争力が低下したらという仮定に基づいているためだ。
では、日本企業は今後も競争力を維持できるのであろうか?
その点に関しては、次回、現在のビジネス環境において起こっている質的な変化をもとにして書いていきたい。
地方国立大卒だけど「学歴」についての話題を終わらせてみようと思う⑤ 学歴がブランド化した要因
どうも意識高男です。
前回は、日本において明治初期から高度経済成長が終わるまで、学歴がずっと機能してきたことを書いた。
そして、さらに学歴が日本において機能してきたことの補足をしたいと思う。
特に、戦後から高度経済成長期においてだ。
この高度経済成長期を支えたのは、言わずと知れたメイドインジャパンを世界に広めた日本企業である。
その日本企業が世界に羽ばたくための動力として活躍したのが、前回書いたように、学歴の高い人達である。
ではこの学歴の高い人達を最も効率よく入社させるための立役者とシステムとは何だろうか。
ここで察しがついている人もいると思うが、立役者は会社の人事部であり、システムは、新卒一括採用システムである。
日本経済は高度経済成長期の環境を考えると円安による追い風に加え、高品質な製品を武器に右肩あがりに成長しており、人事部はとりあえず、地引網で魚を取るがごとく、新卒の学歴の高い人達を入社させていれば良かった。
(人事部が楽をしているとまでは言わないが、この当時どこまで一人一人のパーソナリティまで踏み込んで見ていたかは疑問だ)
当然、成長している企業と学歴が紐付けられ、それに伴い年収とも紐付けされるようになって、学歴がブランド化した。
今日の「いい学校に入り、いい会社に入る」という価値観は、この高度経済成長期の企業と学歴の紐付けにより醸成されていった結果である。
さて、ここまでで学歴の歴史を遡り、今日における学歴信仰が形成されるまでを書いたことで、ようやく準備が整った。
ここから一気に反転攻勢、学歴の話題を終わらせるターンに入りたいと思う。
では、実際に日本における学歴の頂点、最高学府の東大を例に挙げ、世界における位置づけを見ていきたい。
まず、単純に世界大学ランキング(英のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション 2015年版 評価基準は「教育」「研究」「論文被引用数」「産業界からの収入」「国際性」の5つ)で見てみると、東大は北京大学に次いで43位だ。
(ちなみにこの時の1~3位はは1位:カリフォルニア工科大学、2位:オックスフォード大学、3位:スタンフォード大学)
あと、大学別ノーベル賞受賞者数を見てみる。
(50 UNIVERSITIES WITH THE MOST NOBEL PRIZE WINNERSより 2015年)
数えてみたところ10人で世界では56位だ(京都大学も10人でタイ)。
ちなみに1位はというと、ハーバード大学でなんと157人で東大の15倍以上だ。
次回はまた少し切り口を変えて、世界における東大の位置づけを見ていく。
地方国立大卒だけど「学歴」についての話題を終わらせてみようと思う④ 時代の趨勢とペーパーテストの関係#2
意識高男です。
前回は「学歴」(ペーパーテストの点数による序列が、大学別に反映されたもの)が
明治維新以降、それぞれの時代(下記参照)において有効に機能してきたことを述べた。
①欧米キャッチアップによる日本近代化の時代(明治初期~後期)
では、だんだん我々になじみのある時代
③戦後から高度経済成長期(昭和中期~後記)において学歴がどのように機能したかを書きたい。
結論から言おう。
「学歴」はこの時代にも大変有効に機能した。
私見も入るが、どういうことか。
まず、この時代に起こったことを書き、その後、学歴がどう機能したかをひも解いていきたい。
この時代に何があったかといえば、朝鮮戦争(昭和25年)に伴う朝鮮特需だ。
ここで、戦後日本の安い労働力とアメリカ発の大量生産手法が組み合わさり、日本の工業化がスタートした。
今でこそ、メイドインジャパンという言葉は高品質の代名詞のように扱われるものの、この頃の品質はあまり良くなかったようである。
しかし、外部環境としては、朝鮮特需の追い風を受け、工場で製品をバンバン造って売っていた。
ただし、造れば売れるという時期だとしても、さすがにいつまでも安かろう悪かろうでは売れ続けるのは難しい。そこで、日本製品は「安さ」に加え、新たな要素として加わったのが「高品質」だ。
当時、安かろう悪かろうはもちろんのこと、高くて高品質という製品は存在したが、「安くて高品質」な製品はなかった。そのため、いざそういう製品を造れば、売れないはずがない。
日本は安くて高品質な製品を世界に向けて売りまくり、史上にまれにみる高度経済成長を成し遂げた。
さて、この高度経済成長をもたらした、安くて高品質なメイドインジャパン製品を造るための要件とは何だろう。
必要とされる要件を下記に示す。
(実際はもっとあるだろうが、主なものを示す)
・製品(工業製品)を造るための工学知識
・生産ラインを造るための工程設計知識
・製品の品質を担保するための、設備メンテナンス知識
・製品を決められた手順で造るための、作業方法の知識
加えて、安くて高品質な製品が売れ、生産能力も増やしてさらに造り続けることが必要になった場合、下記の要件も必要になる
・大量に増えた作業者を管理するための知識
・大量生産を行うための生産計画を作る知識
・キャッシュが増えることによる資産管理の知識
当然、上記の要件を備えた人が必要になる。上から順番に名前を付けるとするならば、呼び方は様々かもしれないが、製品設計者、製造ライン設計者、メンテナンス技術者、工場作業者、工場人事、工場工務、工場経理となるだろう。
彼らに共通して言えることは、それぞれが持つ知識をダイレクトに活用できる点だ。
とするならば、高度経済成長期において、
各要件を備えた人々の優劣の差を規定するものは、知識のインプット量の差に他ならない。
つまり、この時代においても必要なのは「各要件に必要な知識のインプット」=「勉強」という図式が、やはり成り立つのである。
さらに言うならば、高度経済成長期の日本を取り巻く環境は、日本からの供給に対して世界の需要の方が大きかったとも言えるので、とにかく市場の要求に応えるため、スピーディーに同じものを作り続ければ良かった。
それには、需要に素早く対応して製品を造るというオペレーションを実行する「情報処理能力」と、同じものを作り続けるための「粘り強さ」が必要である。
そして、この二つの能力を持った人材を効率的に選別できるのは「ペーパーテスト」に他ならない。
つまり、日本が高度経済成長を成し遂げるための必勝パターンである
「安くて高品質な製品をスピーディーに造り続ける」ためには、
「ペーパーテストで良い点が取れる人」=「学歴が高い人」が必要だったのである。
以上をまとめると、日本において明治維新から高度経済成長が終わるまで、学歴はずっと有効に機能してきたのである。
次回へ続く